「50cc原付」消滅が直撃――フードデリバリーを襲う“ラストワンマイル危機”
2025年の排ガス規制で50cc原付は事実上の生産終了となった。新基準原付は24万~34万円と従来より10万円規模で高く、配送現場の投資負担は急増している。新聞配達やフードデリバリーなど、低コストで回ってきたラストワンマイルは転機を迎えた。安価な移動手段の消失が物流と生活サービスの価格をどう変えるのか。
環境性能向上と配送現場の機動力低下

50cc原付の終焉をめぐる議論は、環境政策と生活インフラの維持というふたつの価値がぶつかる形で広がっている。新基準原付の導入は、環境性能と安全性能の両面で前進だと位置づけられている。
125ccをもとにした車体は、従来の50cc原付よりエンジンに余裕がある。坂道や荷物を積んだ状態でも走りは安定しやすい。出力に余裕があることでエンジンへの負担も軽くなり、長く使える可能性も指摘されている。
安全面でも変化はある。前輪ディスクブレーキやABSの採用が広がり、急ブレーキ時の安定性は高まった。止まる、走り出すを何度も繰り返す配送業務では、事故リスクの低下が期待されている。
メーカー側にも事情がある。販売台数が減り続けていた50cc専用エンジンをやめ、125ccエンジンへまとめる動きだ。世界各国の排出ガス規制に対応するうえでも、この判断は理にかなう。
ただ、その進歩の裏で、配送の効率に影響が出るのではないかという声も出始めている。125ccベースの車体は、50ccよりひと回り大きく、重さも増える。
日本の都市には、細い路地や限られた駐輪スペースが多い。そうした場所では取り回しの難しさが目立つようになる。
わずかな車体サイズや重量の違いでも、配達員の負担は確実に増える。1日に100回以上乗り降りする現場では、その差が積み重なる。
安全性の向上と引き換えに、軽く小回りの利く機動力は弱まる。一分一秒を争う配送の現場では、この変化は無視できない。
環境対応という名目のもとで、日本の都市環境に合った効率的な移動手段が、より大きく重い規格へ押し込まれている。そう見る向きもある。