高速バスで横行する「相席ブロック」 彼らは迷惑客か、それとも“神客”か?――格安モデルの死角に眠っていたバス業界の埋蔵金
高速バス業界は、直前キャンセルによる“相席ブロック”が引き起こす機会損失を逆手に取り、隣席の独占を正規商品化。バスタ新宿利用者102%・便数91%のひっ迫市場で、空間を収益に変える新たな座席戦略が動き出した。
ペナルティ強化と空間販売

事態を重く見た主要事業者は、キャンセル料規定の抜本的な見直しを断行した。京王バスは2024年7月から当日のキャンセル料を運賃の50%へ引き上げた。JRバス中国も同年9月より、出発2時間前までのキャンセルで50%、それ以降は100%を徴収する規定を導入している。
ジェイアールバス関東は東京~大阪間の路線で、乗車前日や当日の手数料を運賃の20%から30%へ変更した。富士急バスは東京~富士五湖間の路線で、一律100円だった手数料を乗車前日以降は運賃の50%へと改定した。西日本鉄道も東京行きの便で、従来は110円だった前日からの手数料を運賃の50%としている。WILLER TRAVELも出発7日前から手数料を発生させるなど、抑止力を強めている。
同時に各社は空間ニーズを正規サービスとして商品化し始めた。WILLER EXPRESSは隣り合う2席をひとりで独占できる「ダブルシート」プランを提供している。JRバスグループも共通プラットフォーム「高速バスネット」で「隣席空席確保プラン」を展開中だ。
こうした取り組みは、固定されていたバスの乗車定員を、需要に合わせて柔軟に変化させる在庫管理の手法を確立した。一台の車両を、状況に応じて満席で走らせるか、空間にゆとりを持たせて走らせるかを動的に切り替えている。
市場は座席という一部分の販売から、空間という広がりを持った価値の提供へと大きく変化した。これは鉄道の優等車両や航空機の追加サービスと同じ収益の仕組みを取り入れたものであり、高速バスがより快適な移動を目指す事業へと進んでいることを示している。