「おもてなし」の限界――インバウンド消費9.5兆円が隠す「深刻な観光公害」、資産の安売りを断つ「容量経営」の必然とは
インバウンド4270万人、消費額9.5兆円。活況の裏で、日本は無形の社会資本を切り崩す「消耗戦」に陥っている。政府は対策地域を100カ所へ倍増するが、課題は規模ではなく有限な資源を適正な対価で管理する体制の確立だ。おもてなしの幻想を脱し、データと価格による強固な収益体系へ転換できるか。国家の命運を占う。
容量経営への転換

実行可能な具体策はすでに揃っている。
入域料や観光税、二重価格に関する全国統一の指針を早急に整備し、各自治体に地域内の受入れ上限を設定させ、それを執行する法的権限を付与すべきである。自治体の役割は、地域の状況を詳細に把握した上で、適切な市場を能動的に開拓し、地域に合わない需要には市場を閉鎖するほどの管理権限を行使することだ。
鉄道、バス、航空における混雑連動型運賃の導入や、高付加価値な体験を保証する認証制度の確立、地方空港と二次交通への集中投資も不可欠である。実務では、行政が即時の混雑情報を可視化し、事業者は完全予約制と価格差別化を基本に運営し、旅行者に混雑回避を促す明確な価格上の動機を示す必要がある。
北海道倶知安町の「Kutchan ID+」のように、住民向け割引とインバウンドへの適正価格提示を組み合わせる手法は、収益を地域インフラの維持に直結させる有効な仕組みを生む。さっぽろテレビ塔の入場料が市民向け800円、一般1200円に設定された事例もこれに続く。
自治体や事業者は、インバウンドには地域社会を維持する対価を求め、住民には生活の質を保証する二層の価値を確立する経営判断を行う必要がある。すべての要望に応える必要はなく、地域にふさわしい顧客を選ぶ姿勢こそ、持続的な繁栄につながる。