高速道路の8割が「老朽化」 リニューアル工事が渋滞を常態化、物流・地域経済に積み上がる“見えない損失”とは

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開通から30年以上が約6割、2030年には8割へ――老朽化が進む高速道路で更新工事が常態化し、車線規制と渋滞が地域経済を直撃する。止めずに直す時代の“見えないコスト”が、いま生活と物流を圧迫している。

高速道路の更新期

高速道路のリニューアル工事(画像:写真AC)
高速道路のリニューアル工事(画像:写真AC)

 私たちの暮らしを日々支えている高速道路が、いま大きな節目を迎えている。老朽化が一気に表面化してきたためだ。2026年時点で、全国の路線の平均経過年数は30年を超え、約6割が開通から30年以上を経過した。2030年にはその割合が約8割に達し、40年以上を過ぎる区間も5割を超える見通しにある。

 この状況は、突然訪れたわけではない。戦後の高度経済成長期に集中的に整備が進んだことで、供用開始の時期がほぼ重なった。年数が経てば劣化も同じ頃合いで進む。過去にまとめて造った道路が、同じ時期にそろって手入れを必要としている。時間差で返ってきた負担が、いま全国に広がっているといったほうが実感に近い。

 高速道路は、一度つくれば長く使い続けることを前提とした社会基盤である。一定の年数が過ぎれば、大規模な更新が避けられない。各地で同時に工事が始まっているのは偶然ではない。これまで積み上げてきた投資の結果が、年表の上で重なっただけの話でもある。

 加えて、利用の中身も変わった。交通量は増え、車は大型化し、大型車の割合も上がった。橋や床版、トンネルにかかる負荷は、建設当時の想定を上回っている。物流の集約が進み、幹線に交通が集中するようになったことも影響している。部分的な補修で持ちこたえてきた区間でも、傷みの進み方が早く、細かな手当てだけでは追いつかなくなってきた。最近は、構造物全体の寿命を延ばす工事へと重心が移っている。

 一方で、人口減少と財政の制約が続くなか、新しい並行路線を造って機能を置き換えるやり方は現実味に欠ける。用地の取得は難しく、事業費も膨らむ。既存の道路を生かしながら手を入れていくほうが、費用面でも時間面でも無理が少ない。結果として、使いながら直す方式が各地で広がった。

 とはいえ、高速道路は人の移動と物流の両方を担う動脈である。長期間の全面通行止めは、地域の経済や日常生活にすぐ跳ね返る。店の仕入れや通勤、通院まで影響が及ぶからだ。交通を止めずに工事を進めることが前提となり、車線を規制しながら少しずつ施工するリニューアル工事が主流になっている。

 いま私たちが直面している更新期は、古くなった設備を手当てするだけの話ではない。社会活動を止めないという条件を抱えたまま、広範囲の補修を同時に進めなければならない段階に入った。難しい局面に差しかかっている、というのが実情だろう。

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