高速道路の8割が「老朽化」 リニューアル工事が渋滞を常態化、物流・地域経済に積み上がる“見えない損失”とは

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開通から30年以上が約6割、2030年には8割へ――老朽化が進む高速道路で更新工事が常態化し、車線規制と渋滞が地域経済を直撃する。止めずに直す時代の“見えないコスト”が、いま生活と物流を圧迫している。

社会的合意の必要性

高速道路リニューアル危機の現状と影響。
高速道路リニューアル危機の現状と影響。

 安全を守るために、リニューアル工事を着実に進めていく。その必要性自体は、これから先も変わらない。老朽化した橋や高架を手当てせずに使い続ければ、いつか大きな事故や長期の通行止めに行き着く。いったん止まれば、人の移動も物流も滞り、社会全体の損失は相当な規模になるだろう。だから補修や更新は避けて通れない。そこに異論はほとんどないはずだ。

 ただ、その一方で、いまの暮らしや産業活動への影響を「仕方がないもの」として受け止めてもらう前提のままでよいのか、という疑問も残る。混雑が長引き、時間が読めなくなり、日常の動きがじわじわと削られていく。その負担を当然のコストとしてのみ扱っていいのかどうか。安全と利便のどこで折り合いをつけるのか。この問いは年々重みを増している。

 今後を見れば、老朽化する路線はさらに増える。更新工事は一部の地域の出来事では済まない。全国のあちこちで、同じような規制や渋滞が繰り返されることになる。沖縄自動車道で起きた住民や自治体との摩擦も、特別な事例とはいい切れない。他の地域でも起こり得る話だ。

 高速道路を止めずに使い続けるという前提を置くなら、更新にかかる費用を誰がどう分かち合うのか、事業の進め方をどう評価するのかといった土台の部分から考え直す段階に入っている。もはや個別の工事の問題ではなく、社会全体のテーマになりつつある。

 将来にわたって道路の質を保つには、利用者に我慢を重ねてもらうだけでは長続きしない。混雑や時間の損失が生む不利益をどう補うのか、負担が特定の地域や立場に偏っていないか。そうした点を確かめながら、納得できる形で分かち合っていく必要がある。

 安全という大義の陰に隠れがちな生活への影響にも目を向け、関係者が情報を開示し、話し合いを積み重ねる。その手間を省かないことが、結局はいちばんの近道なのだろう。そうした積み重ねがあってこそ、更新期に入った高速道路を社会全体で支えていく合意が、現実味を帯びてくる。

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