高速道路の8割が「老朽化」 リニューアル工事が渋滞を常態化、物流・地域経済に積み上がる“見えない損失”とは

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開通から30年以上が約6割、2030年には8割へ――老朽化が進む高速道路で更新工事が常態化し、車線規制と渋滞が地域経済を直撃する。止めずに直す時代の“見えないコスト”が、いま生活と物流を圧迫している。

地域経済への影響

だんだん疲弊していくイメージ(画像:写真AC)
だんだん疲弊していくイメージ(画像:写真AC)

 渋滞で失われる時間は、移動の煩わしさにとどまらない。遅れが積み重なるにつれ、地域の仕事の回り方そのものに影が差す。人や物の流れが滞れば、産業の動きも鈍くなる。道路事情は生活の裏方と思われがちだが、実際には日本全体の活動量を左右している。

 とりわけ影響が表れやすいのが地方の経済圏だ。都市部のように鉄道や複数の幹線道路が重なっているわけではない。移動の多くを高速道路に頼っているため、一本の路線が詰まっただけで、物流も人の往来も広い範囲で足踏みを強いられる。う回の余地が少ないぶん、遅れがそのまま地域全体へ広がっていく。

 物流の現場では、そのしわ寄せがはっきり出る。到着時刻が読めなくなると、積み替えや集荷の段取りが崩れ、待機時間が増える。車両が戻ってこなければ次の便も出せず、回転は落ち込む。拠点や車両、人員に余裕のない中小の事業者ほど、この遅れを吸収しきれない。燃料費や人件費がかさみ、増えた分はそのまま負担になる。価格に上乗せするのも簡単ではなく、利益は削られ、事業を続けられるかどうかにまで話が及ぶ。長く地域を支えてきた足腰が、少しずつ弱っていく感覚が残る。

 観光が主力の地域でも事情は変わらない。国内の観光地の約9割は自動車での来訪を前提に成り立ち、年間10万人以上が訪れる場所も全体の約4割を占める。道路が混めば到着が遅れ、滞在時間が短くなる。食事や買い物、宿泊に使われるはずだった時間が削られ、消費の機会も減っていく。繁忙期であっても売上が伸びきらないという声は、こうした背景と無関係ではない。

 筑波大学が茨城県筑波山で行った調査(2022年5月4日実施)では、総需要のおよそ22%が渋滞によって失われたと算出された。1分あたり18.45台の損失で、金額にすると約239万円にのぼるという。もっとも、これは現地で確認できた範囲の数字に過ぎない。混雑を嫌って最初から訪問を見送った人までは含まれていないため、実際の影響はさらに大きいと見るのが自然だ。

 働く側の負担も積み重なる。通勤時間が延び、到着時刻が安定しない日が続けば、生活のリズムは乱れる。結果として長時間労働が増え、人が定着しにくくなる。人手が足りなくなれば、生産力やサービスの質が落ちる。そうした変化が重なり、地域の活力がじわじわと削られていく。渋滞は一時的な不便として片付けられる話ではなく、経済の縮小を引き寄せる要因のひとつとして、すでに現実の数字に表れている。

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