「前向き駐車」は誰のためなのか?──排ガス配慮が生んだ「出庫事故リスク」と不都合な真実
「前向き駐車でお願いします」は配慮の象徴か、それとも新たなリスクか。排ガスや防犯対策として広がる一方、後退事故は全体の約5%、死亡事故の4割が歩行者という現実もある。駐車の向きが映す日本の都市構造と安全のジレンマを追う。
前向き駐車要請という違和感

店舗や住宅街に隣接する駐車場では、「前向き駐車でお願いします」という注意書きを見かけることがある。日常的な表示だが、その意味が正確に理解されていない場面も少なくない。
ここでいう前向き駐車とは、進行方向のまま駐車スペースに進入し、その状態で停車する方法だ。出庫時に前進できるよう、あらかじめバックで駐車することだと誤解されがちだが、それは前向き駐車ではない。あくまで入庫時に前進したまま停める方式である。
日本で一般的なのはバック駐車だ。自動車教習所でも主に教えられるのはバック駐車や縦列駐車であり、前向き駐車を反復して練習する機会は限られている。特段の指定がなければ、多くのドライバーが無意識にバック駐車を選ぶのは自然な流れだろう。
バック駐車が定着した背景には、自動車の構造的特性がある。多くの四輪車は後退時のほうが車両後部を支点に動かしやすく、前進時よりも小回りが利く。狭い区画でも比較的容易に位置決めできるため、限られたスペースが多い日本の駐車環境と相性がよかった。
加えて、バックで駐車すれば出庫時は前進となる。運転席からの視界を確保しやすく、歩行者や周囲の車両を確認しやすい点も、安全性の観点から評価されてきた理由のひとつだ。
それにもかかわらず、あえて前向き駐車を求める駐車場は存在し続けている。利便性や安全性で合理的とされてきた慣行とは異なる方法を、なぜ一部の現場は選ぶのか。その背景には、駐車行為そのものではなく、周辺環境との関係性が深く関わっている。