「スズキの牙城が瓦解する」関税110%→10%の衝撃――トランプ保護主義が生んだ“日米抜き”新経済圏、日本の現地化モデルどうなるのか

キーワード :
,
インド市場で日本勢が築いた40年の牙城が揺らぐ。2026年1月、欧州車の関税が110%から10%へ引き下げられ、430万台市場で欧州勢の技術と価格競争力が急進。制度変更が現地生産モデルを圧迫し、日本メーカーは国際標準争いで孤立の危機に直面している。

変わりゆく産業地図

フォン・デア・ライエンEU委員長(画像:EU)
フォン・デア・ライエンEU委員長(画像:EU)

 インドにおける輸入完成車(CBU)の市場占有率は、現時点では極めて限定的である。2024年度の国内生産台数約506万台から輸出分の約77万台を差し引いた約429万台という数字は、国内販売台数とほぼ一致しており、自給自足に近い構造が維持されてきたことを裏付けている。

 しかし、今回の合意によって数年以内に完成車輸入の占有率が数%規模へ急伸する事態は十分に起こり得る。国内シェアが40%を超えるマルチ・スズキの独占的な地位を欧州車が脅かす場面は、もはや空想ではなく現実の脅威として迫っている。

 さらに、インドとEUが米国を介在させずに車両の認証基準や環境規制で合意を形成すれば、将来的にグローバルサウスにおける事実上の標準が確立される。この状況は、日米のメーカーが規格争いにおいて孤立を深める事態を招く恐れがある。

 日本勢に残された対応策は、既存の経済連携協定(EPA)を劇的に拡充し、欧州と同等の特権を確保することに尽きる。あるいは、欧州勢と部分的な資本・技術提携を行い、供給網を乗り換える決断も検討すべき段階にある。

 インドを巡る欧州の包囲網は、特定の地域市場における競争激化に留まるものではない。トランプ政権による保護主義政策を端緒とした世界秩序の変容が、確実な広がりを見せていることを証明する象徴的な出来事である。これは、これまでの成功体験に基づいた現地化戦略を維持するだけでは生存が困難であり、地政学的な激変に即応した抜本的な行動が求められていることを示しているだろう。

全てのコメントを見る