「EV = 走るスマホ」という表現は正しいのか?――ネットの定番フレーズを“冗談半分”で検証してみた

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EVは「走るスマホ」と呼ばれるが、産業構造や責任範囲はスマホとは大きく異なる。テスラとトヨタの戦略対比を通し、情報化と物理的制約の狭間で揺れるEV産業の実態を検証する。

テスラとトヨタの対比

トヨタ・bZ4X(画像:トヨタ自動車)
トヨタ・bZ4X(画像:トヨタ自動車)

 EV市場でテスラとトヨタを比べると、「EVは走るスマホ」なのかどうかの判断材料が見えてくる。テスラはEVを前提に据えた統合的な構成で、収益の形を従来の自動車メーカーとは異なるものに変えようとしてきた。

 フルセルフドライビング(FSD)などの先進運転支援機能をOTAで更新し、課金制による収益モデルを構築した先駆者として知られる。物理的な制約を計算手順の高度化で突破する合理主義は、シリコンバレー的な発想だ。資本市場の高い期待を成長の原資に変える手法は、これまでの産業構造を揺るがす力を持つ。

 一方、トヨタは既存のラインナップを基盤に収益を確保しながら、そこから得た資金をEVに段階的に投入している。短期間でEVに飛び込むことは難しく、実績を維持しつつ徐々に事業ポートフォリオを移行させる慎重なやり方だ。

 トヨタが進めるのは、いわばマルチパスウェイ戦略である。エンジン技術の開発を続けながら、EVや燃料電池車、全固体電池といった先端技術への投資も並行して行わねばならない。技術的な優劣の問題ではなく、背後にあるサプライヤーや販売網、雇用を含む経済圏全体を維持しつつ次の世代へ移行する社会的責任の重さを反映しているのだ。

 両者は、投資回収の期間やリスクに対する許容度も根本的に異なる。EV一本で勝負するテスラにとっては、普及の進展が収益に直結するため、長期的なモデルサイクルの見通しが不可欠だ。投資回収の長期化でリスクを抑えつつ、次世代モデルへの資金を確保してきた。

 次の段階ではロボタクシーに注力し、事業の拡大を狙う。一方でトヨタも長期的な展開を基本としている点は共通するが、リスクをどこで回避するかの判断は容易ではない。市場の変化に応じて臨機応変な対応が求められ、単純な計画では進められない。この対比は、企業が社会に対して負う責任の所在や、資本をどのように循環させるかという考え方の違いを浮き彫りにしている。

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