「EV = 走るスマホ」という表現は正しいのか?――ネットの定番フレーズを“冗談半分”で検証してみた

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EVは「走るスマホ」と呼ばれるが、産業構造や責任範囲はスマホとは大きく異なる。テスラとトヨタの戦略対比を通し、情報化と物理的制約の狭間で揺れるEV産業の実態を検証する。

長期投資型と短期回収型

自動車工場イメージ(画像:Pexels)
自動車工場イメージ(画像:Pexels)

 視点を変え、両者を産業構造の側面から見てみると、違いはさらに際立つ。自動車産業は典型的な長期投資型産業である。開発から量産までには数年単位の時間や多大なリソースを要し、設備投資額も膨大だ。

 完成車メーカーを頂点とするピラミッド型のサプライチェーンが形成され、日本各地に点在する産業集積地は地域経済への影響も大きい。トヨタや日産、ホンダといった大手メーカーは、主要部品サプライヤーへの投資や系列・取引関係を重視している。

 こうした協力体制は、数千億円規模の資本を共同で支え、長期にわたるリターンを得るためのリスク分散の仕組みとして機能する。自動車のライフサイクルが7年以上に及ぶことが増えている以上、投資はどうしても長期になる。

 これに対して、スマホを中心とするIT・通信産業では、製品のライフサイクルが短いため、短期回収型の投資が主流となる。業界内で使われる部品や人材の流動性は高く、企業間の移動も比較的容易だ。情報を複製して価値を広げられるIT産業の論理は、重厚な生産設備や大量の雇用を抱える自動車産業とは本質的に異なる。

 利益の配分にも差がある。自動車産業では完成車メーカー、部品メーカー、販売網が利益を分け合う構造が長く続いてきた。製品価値は物理的な精度や耐久性に依存するため、利益は自然とサプライチェーン全体に分散される。

 これに対し、IT・通信分野では、プラットフォーマーやOS提供者に利益が集中しやすい。物理的制約から解放されるほど、富の集積は速くなる傾向がある。こうして両者は、投資の性質も利益構造も対極にある産業であることがわかる。

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