「EV = 走るスマホ」という表現は正しいのか?――ネットの定番フレーズを“冗談半分”で検証してみた

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EVは「走るスマホ」と呼ばれるが、産業構造や責任範囲はスマホとは大きく異なる。テスラとトヨタの戦略対比を通し、情報化と物理的制約の狭間で揺れるEV産業の実態を検証する。

売り切りか課金の選択

中古車市場のイメージ(画像:写真AC)
中古車市場のイメージ(画像:写真AC)

 自動車の販売は、製品を引き渡した時点で利益を確定させる売り切り型が基本となっている。メーカーは得た収益を部品や技術を提供するサプライヤーに分配しながら、次の車両開発に回していく。

 近年では、ソフトウェア制御が中心の車両が登場し、後から機能を追加する課金モデルが試みられるようになった。完成車メーカーは既存ユーザーを囲い込み、課金による収益の安定化を目指している。しかし現状では、その貢献度は限定的で、スマホ型の収益モデルが主流とまではいえない状況である。

 こうした変化を抑える要因として、中古車市場の存在がある。自動車は数年単位で転売されることを前提とした資産であり、その価値が維持されることで新車購入が促される。もしソフトウェアの更新によって旧型車の魅力が大きく損なわれれば、ローンやリースで算出される残価の仕組みも揺らぎかねない。課金型ビジネスへの全面移行が難しい背景には、市場全体の資産価値を守るという自動車産業特有の論理が働いているのだ。

 対照的に、IT・通信分野ではスマホ本体や利用中の課金が収益の中心を占める。ユーザー数の拡大がそのまま収益増につながるため、シェア拡大が市場成長の前提となる。各社は利用料の引き下げや残価設定型クレジットの普及などで需要を喚起し、シェア拡大を狙う。

 スマホは数年での買い替えを前提とした消費財であり、二次流通の価値よりも最新機種への移行スピードが収益に直結する。この回転の速さが、自動車とITの稼ぎ方の差を際立たせている。

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