「EV = 走るスマホ」という表現は正しいのか?――ネットの定番フレーズを“冗談半分”で検証してみた
EVは「走るスマホ」と呼ばれるが、産業構造や責任範囲はスマホとは大きく異なる。テスラとトヨタの戦略対比を通し、情報化と物理的制約の狭間で揺れるEV産業の実態を検証する。
安全性が決める開発スピード

技術進展の速度には、安全への要求が強く影響している。EVは人命を載せる移動体であるため、不具合に対する許容度は極めて低い。特に搭載される部品やソフトは、完成車メーカーやサプライヤーによってppm単位で管理されることが一般的だ。わずかなバグでも走行不能や重大事故につながる可能性があるため、再発防止策を徹底する必要がある。
この厳格な品質管理は、機能安全という考え方に基づき、万が一の故障時にも安全側へ制御を導く多重の保護や制御ロジックを求める。IT業界のアジャイル開発による迅速な改善と、自動車業界が長年守ってきた堅牢性の確保とは、根本の部分で相反する。後からソフトの更新で修正すればよいという考え方は、物理的衝突や人命保護が優先される現場では通用しにくいのだ。
さらに車両のライフサイクルが長期化しているため、大幅な改良を頻繁に加えることも難しい。結果として、モデル初期の不具合をいかに抑えるかが、製品の成否を左右する。一方でスマホの場合は、OSやアプリの不具合を後から段階的に改善していく前提が一般的だ。ハードの作り込みは必要だが、ソフト面では市場投入後に完成度を高める開発手法が主流である。
こうして見ると、両者は開発手順や検証期間、対応の考え方において根本的に異なる。長期的な安定性を優先する自動車と、短期で更新を重ねるIT製品。技術進展の速度を左右する要素として、安全性の重みがそのまま両者の構造差を際立たせている。