「世界2位の線路網」「支出は欧州最下位」スペイン高速鉄道、相次ぐ事故が示した“拡張優先”の代償
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2026年1月、スペインで2件の鉄道事故が相次ぎ、死者47人超、負傷者150人超に。高速鉄道の利用倍増とインフラ維持費の不足が重なり、安全管理の限界が露呈した事態である。
規模は世界第2位、だが維持管理費は最下位
2020年12月に列車のオープンアクセスが始まって以降、スペインの高速鉄道網には他国の鉄道運営事業者が相次いで参入した。かつては国営事業者が担ってきた運行の現場に競争が持ち込まれ、鉄道サービスを巡る環境は大きく変わっている。各社は運賃の引き下げや最高速度の引き上げ、環境への配慮を打ち出した新たな仕組みづくりなどを通じて差をつけようとしており、市場全体が活気づいてきたのは確かだ。その流れを受け、ADIFも各地で新路線の整備に力を注いできた。
ただその拡張の裏側で、鉄道インフラの維持管理が限界に近づいているとの指摘が強まっている。他国との競争を意識するなかで高速鉄道網は急速に広がり、総延長では中国に次ぐ世界第2位の規模に達した。
一方、2024年に公表されたドイツの鉄道協会の調査では、欧州14か国のなかで国民1人あたりの鉄道インフラ支出額は最下位だった。路線の規模に比べ、日々の維持に回される資金が十分とは言えない状況が続いている。財政が逼迫する一因になっているとみられる。
スペインの高速鉄道は利用率が高く、設備の消耗も早い。それにもかかわらず、維持管理への投資が後回しにされてきた点は問題視されてきた。実際、同国は高速鉄道網への投資額そのものは大きく、2018年から2022年にかけては年平均で約15億ユーロを投じている。ただしその多くは路線の拡大に充てられ、維持管理に割り当てられたのは全体の16%にとどまっていた。欧州委員会のデータを見ると、フランスやドイツ、イタリアといったEUの主要国では鉄道インフラへの支出の約3~4割を維持管理に回している。規模や利用実態を踏まえれば、スペインにも同程度、あるいはそれ以上の水準が求められていると言えるだろう。