「世界2位の線路網」「支出は欧州最下位」スペイン高速鉄道、相次ぐ事故が示した“拡張優先”の代償

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2026年1月、スペインで2件の鉄道事故が相次ぎ、死者47人超、負傷者150人超に。高速鉄道の利用倍増とインフラ維持費の不足が重なり、安全管理の限界が露呈した事態である。

速度制限導入と残る不安

 今回の事故を受け、現場の運転士から線路状態や運行上の異変について相次いで報告が寄せられた。こうした声を受け止める形で、ADIFはマドリード―バルセロナ間、マドリード―バレンシア間を含む高速鉄道網に一時的な速度制限を設けた。

 この高速鉄道網では、EUの要請によりETCSの設置が義務づけられている。ETCSは速度超過時に列車を自動的に減速させる仕組みだ。列車の速度を常時把握し、逸脱を防ぐ仕組みは、すでに整えられてきたといってよい。

 ただし過去を振り返れば、楽観はできない。2013年には速度超過が原因とされる大規模な高速列車の脱線事故が起きている。事故現場となった路線には、ETCSが導入されていなかったことも明らかになった。ADIFは長年にわたり鉄道インフラの維持管理という難題を抱えてきた。設備の更新や保守が追いつかず、老朽化が目に見える形で表れ始めている状況は否定できない。

 こうした現実を受け、労働組合のスペイン運転士・助手労働組合(SEMAF)は「鉄道網の劣化が進み続ける現状は受け入れられない」と強い姿勢を示した。職員と利用者の安全を守るため、2月にストライキを実施すると表明し、鉄道網全体での対策を急ぐよう訴えている。実際、スペインの鉄道に対する信頼はこの数年で大きく揺らいだ。マドリード近郊の高速鉄道網では、2018年以前と比べ、遅延や運休、事故といったトラブルが3倍以上に増えていたこともわかっている。

 今のスペインの鉄道には複数の弱点が重なっている。運転士の労働環境に対する不安、現場で生じる混乱をどう抑えるかという問題。加えて、インフラのあり方を抜本的に見直すことと同時に、問題が起きた際に情報を伏せることなく、利用者に向けて説明を尽くす姿勢が問われている。信頼の回復には時間と具体的な行動の積み重ねが欠かせない。

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