「世界2位の線路網」「支出は欧州最下位」スペイン高速鉄道、相次ぐ事故が示した“拡張優先”の代償

キーワード :
2026年1月、スペインで2件の鉄道事故が相次ぎ、死者47人超、負傷者150人超に。高速鉄道の利用倍増とインフラ維持費の不足が重なり、安全管理の限界が露呈した事態である。

拡張を優先してきた代償

ADIFのウェブサイト(画像:ADIF)
ADIFのウェブサイト(画像:ADIF)

 ADIFはスペイン全土の線路や駅、貨物ターミナルといった鉄道インフラを管理する国営企業だ。かつてはRenfeが運行もインフラも両方担っていたが、2005年に状況が変わった。欧州連合(EU)からの要請を受け、鉄道インフラの管理を自然独占として切り分け、民間企業が貨物列車事業に参入できる環境を整えることが求められた。その結果、RenfeとADIFは役割を分けることになった。

 この流れは旅客分野にも及んでいく。2020年12月以降、EU域内では旅客列車を含め、民間事業者の参入が可能になった。今ではかつてRenfeが独占していた高速鉄道市場に複数の事業者が入り、競争が常態化している。利用者数も増えた。スペインの高速鉄道を使う旅行者は自由化前と比べおよそ2倍に達している。

 だがその裏側で、インフラの維持にかかる負担が急速に重くなっていることも見えてきた。2018年以降、鉄道インフラに関する保守関連の支出は増えている。2020年には路線整備だけで558億9000万ユーロ超が投じられた。その約半分は、EUからの補助金や融資に支えられている。2025年1月14日には、ADIFが欧州投資銀行から3億5000万ユーロの融資を受ける契約も結んだ。

 こうした数字を並べると、スペインの鉄道インフラがEUの資金支援に大きく依存している実態が浮かび上がる。国内の財源だけでは立ち行かない。その余裕のなさが、SEMAFによる線路状態の報告に十分応じられなかった背景にあるとみる向きもある。拡大を続けてきた体制が、足元の管理にまで目を配る余力を失っていた可能性は否定できない。

全てのコメントを見る