「世界2位の線路網」「支出は欧州最下位」スペイン高速鉄道、相次ぐ事故が示した“拡張優先”の代償
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2026年1月、スペインで2件の鉄道事故が相次ぎ、死者47人超、負傷者150人超に。高速鉄道の利用倍増とインフラ維持費の不足が重なり、安全管理の限界が露呈した事態である。
亀裂と歪み、そして崩れた岩
鉄道事故調査委員会は1月24日、アンダルシア州の事故について調査状況を公表した。現地の確認や資料の精査を通じて、徐々に事実が見えてきている。
Iryoの高速列車が走っていた区間の線路に、およそ40cmの亀裂があった。その周辺は外側に向かって歪んでいたという。こうした異常は、事故の前から存在していた可能性を示す証拠とともに報告されている。
脱線と衝突が起きたのは全8両編成のうち後方の3両だった。事故の直前に同じ区間を通った複数の列車、そして当該車両でも脱線を免れた1両目から4両目までの車輪には、共通する損傷があったという。ところが5両目の車輪だけは、外縁部に異なる傷が残っていた。調査関係者の見方では、この位置を境に線路の歪みが大きくなり、続く6両目から車体が軌道を外れたらしい。
一方、カタルーニャ州の事故には、より広い背景がある。長い干ばつの後に局地的な豪雨が発生し、地盤が不安定になっていたとみられている。悪天候への警戒が強まるなかでも、列車は通常どおり運行されていた。その結果、擁壁から崩れた岩が運転席を直撃した。先頭車両の損傷は大きい。
いずれの事故も、現時点では運転士個人の判断ミスに帰する可能性は低いとされている。むしろ注目されているのは、別の事実だ。数か月にわたり、スペイン鉄道運転士および運転助手組合のSEMAFが線路の状態について繰り返し問題提起していたにもかかわらず、鉄道インフラ管理機構(ADIF)が十分に対応してこなかった。視線は現場の操作よりも、管理のあり方へと向かいつつある。