「転落事故は駅のせい」なのか?――ホームドア未設置を“過失”とみなす日本の安全過熱、欧米比較で考える
日本の都市鉄道では2024年までに全駅でホームドアが整備され、事故件数は明確に減少した。一方、欧米では既存路線での導入は限定的で、コストや運用を踏まえた判断が安全対策の前提となっている。
ホームドア整備の広がりと背景

日本の都市鉄道では、ホームドアの整備が着実に進んでいる。都営地下鉄では2024年に全駅への設置を終え、JRや私鉄でも乗降人員10万人を超える駅を中心に導入が進められてきた。最近では、この条件に該当しない駅にも設置が及び、整備の範囲は徐々に拡大している。
一方で、欧米の主要都市ではホームドアの普及は限定的だ。新線や一部路線を除き、既存路線では導入が進んでいない。ロンドンやパリの地下鉄も、日本と同じように長い歴史や構造上の制約を抱えているが、ホームドアの扱い方には大きな違いがある。この差は、事故の発生頻度や技術水準、財政力の違いだけで説明できるものではない。
注目すべきは、事故の有無そのものではなく、事故が起きた際にどのように捉えられ、どのような対応が求められるかという点だ。転落事故を単に「起きてしまった出来事」と見るのか、
「防ぐことができた事故」
と考えるのか――この解釈の違いが、ホームドア整備の判断に影響を与えてきた可能性がある。以下では、転落事故をめぐる報道や対策の扱いに着目し、日本と欧米で判断がわかれてきた背景を整理する。