「転落事故は駅のせい」なのか?――ホームドア未設置を“過失”とみなす日本の安全過熱、欧米比較で考える
日本の都市鉄道では2024年までに全駅でホームドアが整備され、事故件数は明確に減少した。一方、欧米では既存路線での導入は限定的で、コストや運用を踏まえた判断が安全対策の前提となっている。
安全対策の選択と裁量のバランス

ここまでの議論から見えてくるのは、ホームドアの導入をめぐる判断の違いは、単に設備を設置すべきかどうかの問題ではないという点だ。どのリスクを構造的に遮断し、どの部分を運用や行動によって管理するかという、安全に対する考え方の差として整理できる。
こうした判断の枠組みは鉄道に限らず、道路交通や公共空間、衛生、防災など、他の分野にも共通する。すべてのリスクを設備によって防ごうとすれば、コストや柔軟性の問題が大きくなる。一方で、運用や人の裁量に委ねすぎれば、事故や責任の所在が曖昧になりやすい。
ホームドアの議論が示しているのは、安全対策を設備か運用かの二択で捉えるのではなく、どのリスクを設備で防ぎ、どこに人の裁量や余地を残すのかを整理する必要があるということだ。この視点は今後の安全対策や公共投資のあり方を考えるうえでも、示唆に富む手がかりとなるだろう。