「転落事故は駅のせい」なのか?――ホームドア未設置を“過失”とみなす日本の安全過熱、欧米比較で考える

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日本の都市鉄道では2024年までに全駅でホームドアが整備され、事故件数は明確に減少した。一方、欧米では既存路線での導入は限定的で、コストや運用を踏まえた判断が安全対策の前提となっている。

事故認識の差が映す制度の違い

ホームからの転落事故の推移。ホームドア整備に関するWG報告書より(画像:国土交通省)
ホームからの転落事故の推移。ホームドア整備に関するWG報告書より(画像:国土交通省)

 日本では、駅ホームからの転落事故は個別の出来事として扱われることは少なく、再発防止の対象として継続的に整理されてきた。とりわけ酔客や視覚障害者による転落は、本人の注意不足だけで説明しにくく、社会の関心を集めやすい。2012(平成24)年の東武川越駅や2016年の東京メトロ青山一丁目駅での事故では、「ホームドアがあれば防げたのではないか」という視点が報道や議論の中で繰り返し示され、設備面の条件が事故の背景として強く意識されるようになった。

 こうした過程を経て、日本ではホームドアの効果は、転落事故の削減という点で具体的に理解されるようになった。国土交通省の検討会資料や事業者データでも、設置後に転落事故件数が減少した事例が示され、事故は次第に起きてしまった出来事ではなく、

「防止策が十分であったかが問われる事象」

として認識されるようになった。事故そのものよりも、発生時点でどのような対応がとられていたかが主要な論点となる構図が形成されつつある。

 一方、欧米でも転落事故は社会問題として認識されるが、事故後の対策は非常停止ボタンの活用や、職員や周囲の利用者による対応、案内表示の改善など、運用や行動面に重点が置かれることが多い。

 ホームドアは安全対策のひとつとして言及される場合はあるが、未設置自体が主要な問題として継続的に扱われる例は限られる。欧米の都市鉄道では通勤ラッシュ時の混雑が日本ほど激しくないことも多いが、第三者による突き落としなどの犯罪リスクも想定されており、安全対策の前提条件が日本と大きく異なるとはいい切れない。

 結果として、日本ではホームドアは転落事故対策の中心設備として位置づけられ、整備の有無が安全対策の水準を示す指標とされてきた。これに対して欧米では、

「複数ある対策のひとつ」

として扱われ、制度全体の前提条件として一律に求められるケースは限られる。

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