「軽油120円台」でも喜べないトラック業者の苦悩――暫定税率廃止が暴く“どんぶり勘定”の代償

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1974年導入の燃料暫定税率が、軽油で1L17.1円の引き下げとなる。価格は120円台へ下落見通しだが、燃料サーチャージ導入率は23%。原価計算力の差が、値下げ交渉の明暗を分ける。

導入が進まない燃料サーチャージ

1990年以降の軽油価格推移。2023年6月以降、150円/Lを超える水準で推移してきたが、2025年11月から価格が下がり、140円後半で推移している。石油製品価格調査を元に筆者が作成(画像:坂田良平)
1990年以降の軽油価格推移。2023年6月以降、150円/Lを超える水準で推移してきたが、2025年11月から価格が下がり、140円後半で推移している。石油製品価格調査を元に筆者が作成(画像:坂田良平)

 燃料サーチャージとは、運賃から燃料コストを切り離し、市場価格に応じて変動する費用として荷主に請求する仕組みである。原油価格は市場動向による変動が大きい。ガソリンや軽油など輸送車両の燃料価格も同様に上下する。これらを一律に運賃へ組み込むと、原油高の局面では運送会社の利益が圧迫される。一方、原油安の局面では荷主が割高な運賃を支払うことになる。結果として、双方に不利益が生じる。

 こうしたリスクを避けるため、燃料コストを別建てとする制度が燃料サーチャージだ。

 運送業界における燃料サーチャージの導入は2008(平成20)年に遡る。それ以前から導入の是非は議論されてきた。2008年3月に改正された国土交通省の「貨物自動車運送事業に係る運賃及び料金等の届出に関する通達」では、運賃と燃料サーチャージを分離して届出・記載することが明記された。これを受け、全日本トラック協会は2008年5月に「燃料サーチャージ導入に向けたガイドライン」を公表した。具体的な算定方法や荷主との交渉の進め方を示し、業界全体に導入を促した。

 しかし、実際の現場、すなわち運送会社と荷主の間の契約において、燃料サーチャージの導入は進んでこなかった。東京都トラック運送事業協同組合連合会による「第43回 運賃動向に関するアンケート調査結果」によれば、燃料サーチャージを導入している運送会社は23.2%にとどまる。「導入したことがない」と回答した運送会社は56.0%に上った。

 この調査は対象が限定されているものの、全国の運送会社全体を見渡しても、これを大きく上回る数値になるとは考えにくい。

 本来、運送会社の経営を健全化するはずの燃料サーチャージが、なぜ導入されないのか。「導入したが今はしていない」「検討中」と回答した運送会社の声を、以下で抜粋して紹介する。

・手間と時間がかかる
・燃料サーチャージ分が、物価高騰に追いつかないため、定期的に運賃そのものを上げるようにした
・荷主との運賃交渉において現在は基本運賃を上げてもらう方を選択したため
・得意先に拒否されそうなので
・一時的にもらっていたが毎月交渉になるので時間と手間がかかってしまうので大変でした
・燃料サーチャージを導入するより、運賃そのものを値上げすることが重要と考えている

 ある運送会社では、チャーター便には燃料サーチャージを導入している。一方、混載便については「個別算出が難しい」として導入していない。混載便の燃料サーチャージ算定は、チャーター便に比べて計算が複雑になるのは事実だ。ただし、全日本トラック協会などが算出方法を公開している以上、不可能というわけではない。手間はかかるが、算定できないわけではない。

 要するに、燃料サーチャージを導入しない運送会社の理由は、計算や荷主との交渉を避けたい点にある。運賃全体を引き上げたほうが簡単で現実的だ――という判断だろう。

 この考え方にも一定の合理性はある。法改正などにより事務負担が増えるなか、制度対応を避けたいという現場感覚は理解できる。

 ただし、「面倒くさい」「基本運賃を値上げするほうが楽だ」という対応は、運送コストが一貫して上昇する局面でしか成り立たない。人件費や車両費、保険料、燃料費が下がる局面では、同じ論理は通用しなくなる。

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