「軽油120円台」でも喜べないトラック業者の苦悩――暫定税率廃止が暴く“どんぶり勘定”の代償

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1974年導入の燃料暫定税率が、軽油で1L17.1円の引き下げとなる。価格は120円台へ下落見通しだが、燃料サーチャージ導入率は23%。原価計算力の差が、値下げ交渉の明暗を分ける。

運送会社を追い詰める価格低下

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 燃料サーチャージを導入している運送会社や案件では、暫定税率の廃止は大きな問題にならない。燃料価格が下がれば、サーチャージ額が自動的に低下するだけである。人件費や車両維持費、利益を含むベース運賃には影響しない。

 全日本トラック協会が示す算定方法では、軽油に基準価格を設定している。詳細は省くが、かつては1L100円、近年は120円とする例が一般的だ。この基準価格を下回ると逆ザヤになるとして、燃料サーチャージの制度に懸念を示す声もある。ただし、これは本質的な問題とはいい難い。基準価格を見直し、荷主と再交渉して契約を改めれば対応できるからだ。手間はかかるが、致命的な課題ではない。

 一方で、深刻なのは燃料サーチャージを導入していない運送会社や案件である。

 荷主の立場から見れば、これまで燃料費高騰を理由に運賃引き上げを求めてきた以上、燃料コストが下がれば運賃を引き下げるのが当然だという理屈になる。暫定税率の廃止は、その交渉材料として使われる可能性が高い。

 2025年12月22日、国土交通省、中小企業庁、公正取引委員会は連名で、「燃料価格下落時におけるトラック運送業の適正取引の徹底について(要請)」と題する通知を公表した。暫定税率の廃止により、荷主や元請から運送会社に対して運賃引き下げの要請が生じる可能性があるとの認識を示している。その一方で、運送業界では他業種と比べて価格転嫁が進んでいない現状も指摘した。

 通知では、こうした業界特有の課題を踏まえ、暫定税率廃止を一方的な値下げ交渉の材料として用いないよう求めている。さらに、ガイドラインに沿わない一方的な値下げ交渉は、2026年1月から施行される改正下請法(中小受託取引適正化法、略称「取適法」)に抵触する可能性があると明記し、強い注意を促した。

 同時に、燃料コストの低下だけに着目するのではなく、物価や労務費の上昇も考慮したうえで、運送会社の原価計算に基づく適正な運賃交渉を行うよう要請している。

 この指摘は運送会社の立場に配慮したものだが、燃料サーチャージを導入していない事業者にとっては重い課題となり得る。そもそも原価計算を実施している運送会社が少ないからだ。先の調査によれば、運送原価計算に基づく根拠ある値上げ要請を行っている事業者は29.2%にとどまっている。

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