乗用車に「窒素ガス」は本当に必要? 「空気の78%=窒素」という現実、追加費用の意味を考える
タイヤの空気圧管理が燃費と安全を左右する。航空機やF1で有効な窒素ガスも、乗用車では過酷条件が少なく、効果は限定的。1本500円前後の充填費用を考慮すると、日常では空気圧チェックこそ最大のコスト対策である。
窒素ガスの特性

タイヤには空気ではなく「窒素ガス」が充填されるケースがある。不燃性で乾燥処理された窒素ガスは、水分をほとんど含まないドライエアとして扱われる。そのため、航空機やレーシングカーなど、極めて過酷な条件下でタイヤを使用する場合に採用されることが多い。
ジェット旅客機のタイヤには1200~1400kPaもの空気圧がかかる。これは乗用車の5~7倍に相当する。着陸時にはタイヤの表面温度が180~200度に達する一方、上空1万メートルでは外気温が-45度まで下がる。レーシングカーでもタイヤの表面温度は100度近くに上がり、F1では140度に達することもある。
こうした状況下では、ドライエアの特性が生きる。高温で膨張する水分が少ないため、万一タイヤがバーストしても火災のリスクを抑えられるのである。
しかし、日常の乗用車で窒素ガスを充填する必要性はどこまであるのか。過酷条件でのメリットは大きいが、街乗りではその効果を実感する場面は限られる。