新東名「最後の25km」が秘める1.2兆円効果――延期を乗り越え高松トンネルが挑む地質との闘い

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新東名高速道路の全線開通は、東名高速の慢性的渋滞解消と物流効率化に直結する。未開通の約25km区間が開通すれば、東名区間の渋滞損失時間は年間で数百時間削減され、経済効果は約1.2兆円に達すると試算される。山岳地帯の高松トンネルなど難工事を抱えつつも、建設は着実に進行中で、災害時の代替ルート確保や沿線製造業・物流拠点へのアクセス向上など、多方面での効果が期待される。全線開通は地域経済の新たな起爆剤となる。

不確実性が残す橋梁・トンネル工事

難航する新東名山岳地帯の工事(画像:写真AC)
難航する新東名山岳地帯の工事(画像:写真AC)

 高速道路の開通延期は、完成時期がずれるだけでなく、コスト増にも直結する。新東名の建設費は当初、

「総額約4兆4000億円」

が見込まれていた。しかし工事の難航で開通が遅れ、実際の費用は当初計画を上回るとみられる。

 建設前に正確な調査を行うことが望ましいが、地質調査は完全ではない。仮に詳細な調査ができても、高松トンネルのように建設に不向きな地層が確認されれば、ルート変更の検討が必要になる。その場合、工期と費用はさらに増大する。

 新東名では幸い、用地取得は順調に進み、ほぼ完了している。一方で、橋やトンネル工事は依然として不確実性を抱える。近年は既存路線でも橋梁やトンネルの損傷や崩落事故が発生しており、安全性確保のための設計と施工の高度化が不可欠だ。結果として、安心して利用できる道路づくりには時間と費用を要するのが現実である。

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