なぜ渋滞は「トンネル」で起きるのか? 年間約12兆円の経済損失を生む“見えない敵”の正体

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高速道路のトンネル渋滞は、年間約12兆円の経済損失を生み、車両混雑や事故リスクも増大する。大型車比率38%やEV・自動運転の増加が速度低下を招くなか、構造改善とITS活用など総合対策が急務となっている。

高速道路の構造課題

渋滞ポイントとなっている中央道上り線。小仏トンネル(画像:都野塚也)
渋滞ポイントとなっている中央道上り線。小仏トンネル(画像:都野塚也)

 高速道路を走っていると、渋滞に遭遇する場面は多い。車間が詰まり、速度が大幅に低下し、移動時間が奪われる。高速道路利用者にとって最大の敵ともいえる存在だ。

 渋滞には種類があるが、最も発生しやすいのは交通集中による自然渋滞である。時間帯や曜日によって発生の有無や規模は変わるが、渋滞が起きる場所はほぼ決まっている。いわゆる「渋滞ポイント」だ。主要路線の代表例は

・東名高速:大和トンネル
・中央道:小仏トンネル
・中国道:宝塚東西トンネル

である。首都圏を結ぶ東名・中央道、西日本の大都市圏を通る中国道、いずれもトンネル部が渋滞の震源地となっている。

 ピーク期の渋滞は深刻だ。NEXCOの予測によれば、2024年5月3日のゴールデンウィークでは東名下り大和トンネルで45km、中央道下り小仏トンネルで45km、中国道宝塚東トンネルで10kmの渋滞が見込まれた。新名神の高槻ジャンクション(JCT)~神戸JCTが2018年に開通したことで中国道の渋滞は分散したが、東名と中央道の混雑は依然として解消していない。

 2025年のGW渋滞予測では、10km以上の渋滞発生回数が上り線11回(5月5日)、下り線11回(5月3日)と見込まれていた。主要断面交通量もピーク時には1日3万台を超えた。

 トンネルが渋滞を引き起こす要因は構造上の制約を含め複数ある。政府や高速道路会社は大規模な対策を進めているが、課題はなお多い。渋滞の原因と施策を検証するとともに、利用者側が取り得る工夫についても考えたい。

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