なぜ渋滞は「トンネル」で起きるのか? 年間約12兆円の経済損失を生む“見えない敵”の正体
大型車比率が高める高速道路の渋滞リスク

では、なぜトンネルで渋滞が発生しやすいのか。原因は複数ある。
トンネルは基本的に山間部や地下に設置され、周囲への騒音や排気ガスの抑制が求められる。そのため、建設には構造や費用の制約がかかる。結果として、通常道路より車線数が少なく、車線幅も狭くなりやすい。これが渋滞を誘発する構造的要因となる。
さらに、トンネルは接続部に上り坂や下り坂をともなうことが多く、車両の速度低下や車間距離の短縮を招きやすい。こうした条件が重なることで、トンネル内では自然に渋滞が生じやすくなる。
トンネルでは、ドライバーの心理や行動も渋滞に影響を与える。日中は明るい場所から暗いトンネルへ、夜間はその逆となるため、ドライバーは自然に速度を落として慎重に走行する。トンネルを抜ける際も明暗の変化が生じるため、同様に速度低下が起こる。
中央道の恵那山トンネルのように、トンネル前後で速度制限や車線変更禁止が設けられている場合もある。この制約により、トンネル内では走行速度が低下しやすくなる。
名神高速の渋滞ポイントである天王山トンネルでは、速度変化のシミュレーションが行われた。非渋滞時でも、入口手前で平均5km前後の速度低下が確認された。シミュレーションの時間帯は、交通量が増え始める15時15分から15時35分までの20分間である。この時間帯に、トンネルによる速度低下と交通量増加が重なることで、ピーク時に渋滞が発生するメカニズムが示された。
近年、高速道路では多種多様な車両が増えている。この変化もトンネル内の渋滞に影響している。特に大型車の割合増加は、渋滞の発生に直結する要因だ。私(都野塚也、ドライブライター)も日々運転しているなかで、大型車の存在感が以前より大きくなっていると感じる。
日本とドイツの高速道路での大型車比率を比較すると、日本は2021年で38%、ドイツは2015年で15%となる。日本はドイツの約2.5倍、多くの大型車が走行している計算だ。新東名高速道路では、走行車のほぼ半数にあたる48%が大型車となる。
さらに、EVや自動運転機能を搭載した車両も増えている。これらの車は従来とは異なる行動をとるため、周囲の車の行動を予測しにくくなり、速度低下につながることがある。実際、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)搭載車が50%混在する車両構成で高速道路を走行した実験では、100km/hで走行していた車が、6~7km先の上り坂で80km/h、急カーブでは70km/hまで速度低下した。道路形状による速度変動は必要だが、過度な低下は渋滞の原因となる。