なぜ渋滞は「トンネル」で起きるのか? 年間約12兆円の経済損失を生む“見えない敵”の正体

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高速道路のトンネル渋滞は、年間約12兆円の経済損失を生み、車両混雑や事故リスクも増大する。大型車比率38%やEV・自動運転の増加が速度低下を招くなか、構造改善とITS活用など総合対策が急務となっている。

トンネル渋滞の解消戦略

年々向上している高速道路の通信システム(画像:写真AC)
年々向上している高速道路の通信システム(画像:写真AC)

 トンネル渋滞の解消には、将来の車社会や交通量の変化を見据えた対策が不可欠である。まず注目すべきは、高度化する交通情報を高速道路事業に活用することである。

 近年、導入が進む高速道路交通システム(ITS)は、人・道路・車両間で情報を受発信し、交通問題にアプローチする仕組みだ。渋滞対策もITSの対象であり、ETC2.0もこの技術を活用したサービスである。リアルタイムで交通状況を把握できるため、混雑時の流入制限や制限速度の調整などが可能になる。

 具体策として、東京湾アクアラインでは、時間帯や曜日に応じた通行料金の変動制度が導入されている。さらに電光掲示板にITSを活用し、制限速度をリアルタイムで変化させることも検討されている。ITSを最大限に活用し、リアルタイムで交通を調整することで、渋滞の解消が期待できる。

 ただし、リアルタイムでの変化には利用者の理解が必要だ。システムの仕組みを理解し、実際に走行して体感するまでには時間がかかる。東京湾アクアライン上り線では、時間帯や曜日に応じた料金変動により、木更津JCTから川崎浮島JCTまでの所要時間が約16%短縮されるなど、一定の効果が確認されている。

 トンネルが渋滞のボトルネックになる背景には、構造上の制約が大きい。そのため、この10年でトンネル改良工事が進められている。

 東名高速の大和トンネルは、1日平均約14万台が通行する、日本屈指の交通量を誇る区間だ。現在は上下線とも片側3車線で運用されているが、上下線それぞれに1車線の付加車線を設置する工事が進行中である。工事は2029年3月下旬まで続く予定だ。施工期間中も片側3車線は常時通行可能にすることで、渋滞増加を最小限に抑える工夫がなされている。

 暫定2車線区間のトンネルには、2025年8月時点でラバーポールによる簡易中央分離帯が設置されている。これをワイヤーロープやブロックに置き換えることで、安全性を高めつつ速度低下を抑える取り組みも進む。

 中央道の小仏トンネルでは、上り線に約2.3kmの新設トンネルを建設し、トンネル通過後約1.5kmの付加車線を増設する工事が進行中だ。下り線では、トンネル通過後の相模湖IC付近に約2kmの付加車線を増設している。中央道では、小仏トンネルなど渋滞が深刻な区間を対象に、渋滞対策を議論する「中央道渋滞ボトムネック対策協議会」が定期的に開かれている。第1回は2013年12月に開催され、2024年11月には12回目が開かれた。

 自動運転補助システムは、高速道路でもある程度自動で運転できる便利な機能である。しかし、この技術のさらなる向上が、渋滞解消には不可欠である。

 具体的には、状況に応じて速度を変化させたり、柔軟な車線変更を可能にしたりする技術が求められる。さらに、渋滞を作らないためのプログラムの搭載も重要である。高速道路では車間距離を一定に保つことや、流れに乗った走行、適切な追い越しも渋滞抑制につながるため、こうした技術の開発も期待される。

 現在、高速道路では実験や実証、いわゆるスマートモビリティゾーン構想が進められている。しかし、高速道路ならではの独自性や優位性が十分あるかというと疑問が残る。今後は、完全自動運転機能を持つ車両の登場も見込まれており、新しい時代に合わせた独自の構想が不可欠である。

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