全国で広がる「バス無料デー」しかし“買い叩き”になる危険性も? 広島・尾道初の無料5DAYSから考える

キーワード :
,
広島県尾道市が初めて実施する「バス運賃無料5DAYS」は、5日間で利用者増を狙う一方、全国的に広がる無料デーは一過性の課題も抱える。長崎や熊本の事例では利用者1.5~1.9倍増、経済波及効果1.1~1.9億円を確認。長期的な利用定着には行政・事業者・地域の協働が不可欠だ。

日常に溶け込む無料策

「バスdeおでかけプロジェクト」のロゴ(画像:小田原市)
「バスdeおでかけプロジェクト」のロゴ(画像:小田原市)

 神奈川県小田原市では、2015(平成27)年度から「バスdeおでかけプロジェクト」を実施している。対象店舗で一日3000円以上の買い物をすると、最大2枚のバス無料券が配布される仕組みである。

 毎年秋に開催され、10年目を迎える。路線バスの利用目的は買い物、通院、役所往復が中心であり、買い物支援を通じた利用促進の効果も期待できる。単発の無料デーだけでなく、

「日常生活のシーンにサービスを組み込む手法」

が長期継続の秘訣といえる。

 同市では箱根登山バスが2024年12月、小学生25人と教員を本社と整備工場に招き、バスの乗り方教室を実施した。児童に路線バスを身近に感じてもらい、将来の利用促進や交通安全意識、乗車マナーの習得を狙った施策である。

 学校での交通教育に加え、無料チケットや学割チケットを活用し、事後に親子でバス利用に親しむ仕組みが重要だ。イベント的に安くするだけでは、長期的な利用喚起にはつながらない可能性がある。

 地域交通の活性化では、投資対効果の評価が必要だ。工場見学や教育など、安価でソフトな体験を通じて利用者を中長期的に増やす施策を検討することが重要である。日常の生活シーンでバスの利便性を体感させる工夫が、利用促進のカギとなる。

全てのコメントを見る