全国で広がる「バス無料デー」しかし“買い叩き”になる危険性も? 広島・尾道初の無料5DAYSから考える
広島県尾道市が初めて実施する「バス運賃無料5DAYS」は、5日間で利用者増を狙う一方、全国的に広がる無料デーは一過性の課題も抱える。長崎や熊本の事例では利用者1.5~1.9倍増、経済波及効果1.1~1.9億円を確認。長期的な利用定着には行政・事業者・地域の協働が不可欠だ。
全国拡大する無料バス施策

路線バスの無料デーは全国で広がっている。正確な統計はないが、
・新潟市
・岡山市
・高知市
・長崎市
・熊本市
などで無料を拡大する動きが増えている。今回、尾道市もこれに加わる。
長崎市では2023年度に合計7回、バスと路面電車の運賃無料デーを実施した。物価高騰で市民の負担を軽くし、新たな利用者を掘り起こす狙いだ。無料デーは6月以降、日曜日に設定されている。ただし国の臨時交付金を活用しており、市町村や事業者単独での継続は難しい状況だ。
無料デーでは利用者が1.6倍から1.9倍に増加した。アンケートでは約9割が満足と回答し、普段利用しない人の約2割が無料デーを利用した。その6割が「今後は公共交通を利用したい」と答えている。2024年3月実施の最終回では、3割が「従来に比べ公共交通機関の利用が増えた」と回答した(『長崎新聞』2024年10月18日付け)。
熊本市も2022~2023年に4回の無料デーを実施した。利用者数は各日1.5~1.8倍に増え、交通量も一部で減少した。経済波及効果は約1.1億~1.9億円、CO2削減量は東京ドーム換算で約1.1~2.0個分と推計されている。無料施策でありながら、一定の効果が確認されているのは事実だ。