中抜きで「年収数千万円」――物流業界を惑わす“水屋”神話! 多重下請け是正が招く運送会社の崖っぷち

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「運送業界の諸悪の根源は元請事業者の中抜きだ」と考える下請事業者は多い。しかし、問題の本質は本当に多重下請構造にあるのか、再考が必要だ。

多重下請の淘汰圧力

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 日本では以前から、運送業界に限らず中小企業が多すぎることが構造的課題とされてきた。実際、日本企業の99.7%は中小企業であり、生産性は低い。中小企業庁の調査によれば、「純付加価値 ÷ 従業者数」で算出した労働生産性の中央値は、

・大企業:605万円
・中規模企業:315万円(大企業の52%)
・小規模企業:168万円(大企業の28%)

となる。これが日本の労働生産性が先進国の中で低迷する一因となっている。運送業界の多重下請構造の是正は、

・経営力の乏しい中小事業者の淘汰
・M&Aによる新陳代謝

を招くだろう。だが政府の方針からは、運送事業者の経営能力を底上げし、育成しようという発想は見えてこない。水屋の中抜きを批判する下請事業者は、自らが淘汰される側にある現実を認識し、発想を改めるべきだ。

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