中抜きで「年収数千万円」――物流業界を惑わす“水屋”神話! 多重下請け是正が招く運送会社の崖っぷち
「運送業界の諸悪の根源は元請事業者の中抜きだ」と考える下請事業者は多い。しかし、問題の本質は本当に多重下請構造にあるのか、再考が必要だ。
多重下請けの価格歪み

政府による多重下請構造の是正には、別の側面もある。2025年6月、改正貨物自動車運送事業法が公布された。2028年6月までに「適正原価」の設定とその遵守が義務化される。これは事実上、最低運賃の強制を意味する。
多重下請が是正されなければ、運賃相場は不自然に上昇し、物価高につながる恐れがある。適正原価は実際に運送を担う事業者に適用される。一方、水屋が荷主に請求する金額は、必然的にその適正原価よりも高くなる。結果として、中間マージンが膨らみ、市場価格全体を押し上げる構造となる。
現時点では、下請構造の制限は2次までとする「努力義務」にとどまる。だが政府は
「元請け憎し」
の世論を背景に、是正の流れを加速させるだろう。筆者は、こうした是正方針そのものを否定しているわけではない。批判しているのは、
「下請けに甘んじざるを得ない実運送事業者が存在する」
という、本質的な課題の解決がなおざりにされている点である。
政府の物流革新政策は、規制に偏っている。規制先行の改革では、業界の疲弊を招くだけだ。それよりも、
「経営の質を高める施策」
が必要だ。物流DXなどの構造的な改革を推進し、事業者の育成を軸に据えるべきである。