中抜きで「年収数千万円」――物流業界を惑わす“水屋”神話! 多重下請け是正が招く運送会社の崖っぷち
「運送業界の諸悪の根源は元請事業者の中抜きだ」と考える下請事業者は多い。しかし、問題の本質は本当に多重下請構造にあるのか、再考が必要だ。
中抜き構造の光と影

水屋は、トラックを持つ運送事業者と、荷主であるメーカー・小売・卸の双方に太いコネクションがなければ務まらない。
筆者が取材してきた水屋のなかには、個人ブローカーに近い人物も多い。意外なことに、
「大手物流会社のシステム子会社出身者」
が少なくない。運送業界に詳しい人は「運送会社出身が多いのでは」と思うかもしれない。たしかに、利用運送の担当者が独立して水屋になる例もある。
しかし、このタイプは起業後に失敗するケースも多い。原因は古巣とのバッティングだ。前職のコネクションを使って営業すると、「ウチの仕事を奪った」とトラブルになりがちである。
一方、システム会社出身者は、荷主・運送事業者の双方と密接な関係を築いているうえ、古巣とビジネスが競合しにくい。そのため、水屋として独立しやすい土壌がある。
仮に1運行あたり2000円を中抜きし、月に30台を25日稼働させれば、売上は150万円になる。元手がほとんど要らず、個人でも利益が出やすいモデルだ。こうして物流業界には、
「年収数千万円」
を稼ぐ水屋の話が都市伝説のように語られている。現実はそこまで甘くないが、「中抜きだけで数千万円」との印象から、水屋は嫉妬と羨望の対象になっている。