熊本は「福岡」を超えられるか? 空港・駅・人口で見る“圧倒的格差”の正体――テクノポリスは“九州のシリコンバレー”になれるか
関西以西で「独り勝ち」とされる福岡市と、TSMC効果で活気づく熊本市。両市の空港、中心駅、大規模バスターミナルを比較し、その実力差と熊本市の対抗策を探る。
福岡独走の理由と熊本の挑戦

2024年6月、台湾銀行が福岡市に駐在員事務所を設立した。これは、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出にともない、資金需要や決済業務の増加を見込んだ動きである。これに続き、玉山銀行と台新国際商業銀行も福岡市内に拠点を開設した。
なぜ熊本ではなく福岡なのか――その背景には、国際金融拠点を目指す福岡市が銀行誘致に積極的である点が挙げられる。しかし、両市の間にはそれ以前からまちの求心力に決定的な差が存在する。歴史的に福岡市をライバル視してきた熊本市。TSMCの進出を契機に、熊本が福岡を超える日は訪れるのだろうか。
九州最大の都市・福岡市は、天神ビッグバン計画の進展もあり、関西以西ではほぼ独り勝ちに近い活況を呈している。2023年の人口は約164万人で、1995(平成7)年から28年間で約36万人(約28%)増加している。
一方、熊本市も周辺自治体へのTSMC進出などにより活況を見せている。2023年の人口は約74万人で、1995年から約9万人(約11%)増加したが、近年は頭打ちから減少傾向に転じている。両市はいずれも政令指定都市で、距離は約100kmと微妙に遠く、また近い位置関係にある。
福岡市は関西以西の中枢管理機能が集中し、オールラウンドに発展してきた。一方、熊本市は1983(昭和58)年に周辺自治体がテクノポリス(高度技術集積都市)に指定されて以降、その母都市として成長してきた。TSMCが熊本を選んだのは、豊富な水資源とテクノポリスという基盤があったためだ。
人口差は約2倍だが、まちの求心力はそれ以上の差がある。求心力を測る指標は多様だが、ここでは
・空港
・中心駅
・大規模バスターミナル
という交通拠点に着目し、両市を比較する。