中抜きで「年収数千万円」――物流業界を惑わす“水屋”神話! 多重下請け是正が招く運送会社の崖っぷち
「運送業界の諸悪の根源は元請事業者の中抜きだ」と考える下請事業者は多い。しかし、問題の本質は本当に多重下請構造にあるのか、再考が必要だ。
多重下請け構造の誤解

一方、妬まれる水屋は「中抜きが嫌なら、ウチに頼らず自分で荷主を探せばいい」と主張する。このいい分には一理ある。
2024年8月23日に国土交通省が開催した「第1回トラック運送業における多重下請構造検討会」では、関連する実態調査が公表された。
●下請けを使う側の理由
下請運送事業者を使う理由は、「自社のトラック(ドライバー)が足りないから」「突発的な運送依頼があったから」がともに約6割。「他社を利用したほうが自社で運行するよりも安いから」という理由も2割強ある。(複数回答可)
●下請けとなる実運送事業者側の理由
6割弱が「仲間の事業者を助けるため」、次いで「荷主に直接営業をすることが困難なため」が約2割で続く。(複数回答可)
繰り返すが、水屋が成立するのは、荷主と運送事業者の双方に強いネットワークを持つからである。情報力と営業力こそが水屋の武器であり、これが下請事業者に欠けている。そもそも
・中抜きされる
・運賃が安い
は同義ではない。多重下請構造の本質的な問題は、実運送事業者が安値で仕事を請けざるを得ない状況にある。適正な運賃が支払われていれば、中抜きそのものが問題とは限らない。実際、相場以上の運賃を下請けに支払う水屋も存在する。
「なのに、『中抜きしやがって』って陰口をいわれるのはおかしくないですか」
これは取材で聞いた水屋の声だが、その通りだと感じた。
もちろん、責任を果たさず中抜きしかしない元請事業者は批判されるべきだ。ただし、自らが下請けに甘んじている理由を直視せず、上だけを批判する下請事業者にも問題がある。
だからこそ、多重下請構造の根本に踏み込まないまま「構造解消」だけを掲げる改正事業法や政府の姿勢には違和感を覚える。