「メーカーの努力不足」「魅力がないだけ」 アメ車への感情的反発が全く意味ない理由

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日本市場でアメ車が売れない背景には、単なる「大きさ」や「燃費の悪さ」以上に、税制の不公平や金融制度の未整備といった制度的な障壁がある。2023~2024年の輸入車市場ではアメ車のシェアが低迷し、消費者の関心もわずか6%にとどまる。欧州車が日本仕様を整え、広範なサービス網で信頼を築く一方、アメ車は適応や支援体制の遅れから選択肢にすら入りにくい。真の課題は「売れない」ではなく「選ばれにくい」市場構造にあり、制度改革と多様な支払い手段の導入が急務である。

アメ車不振の本質

ドナルド・トランプ米大統領(画像:EPA=時事)
ドナルド・トランプ米大統領(画像:EPA=時事)

 筆者(清原研哉、考察ライター)は前回、当媒体に「トランプ大統領がオラついても無駄? 「アメ車」が日本で売れない根本理由、データを読み解く」(2025年7月25日配信)というテーマで、制度、経済、消費者意識の各観点から実情を分析した。要約は以下のとおりだ。

・日本でアメ車は売れていない。欧州車が人気で、日本の道路事情に合うため。
・2023~24年の輸入車市場でアメ車のシェアは低迷し、ジープも減少傾向。
・アメ車が売れない理由は大きさ・燃費の悪さだけでなく、高い維持費やローンのハードル、修理の不便さもある。
・日本独自の税制や車検制度、左ハンドル嫌悪も障壁となっている。
・消費者の多くはアメ車に関心がなく、「遠い存在」と感じている。
・一部人気モデルはあるが、市場復活には日本仕様の車両開発、金融支援、整備体制強化、明確なブランド戦略が必要。
・単に「売る」だけでなく、「選ばれるしくみ」づくりが不可欠。

これに対して、

「米国メーカーの努力不足」
「売れない理由を探すほうが難しい」
「大きいから売れない」
「欧州車は文句なく売れているから、アメ車には魅力がないだけだ」
「フォードもクライスラーも撤退済みで、売れる以前の問題だ」

といった感情的なコメントが多く寄せられた。

 しかし、こうした反応は表面的な現象に対する印象論にすぎない。本質的な問題――なぜアメ車は日本市場で選ばれにくいのか――の解明にはつながっていない。というわけで、本稿では感情論がなぜ意味を持たないのかを、制度・構造・経済の視点から掘り下げる。真に議論すべき基盤を示し、日本市場におけるアメ車の課題を明らかにする。

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