中抜きで「年収数千万円」――物流業界を惑わす“水屋”神話! 多重下請け是正が招く運送会社の崖っぷち
「運送業界の諸悪の根源は元請事業者の中抜きだ」と考える下請事業者は多い。しかし、問題の本質は本当に多重下請構造にあるのか、再考が必要だ。
自立困難な運送現場

「多重下請構造是正のために2次下請けまでに制限を行えば、仕事が得られず路頭に迷う運送会社が多数出てくる。国の方針としては『こういった経営力のない運送会社は淘汰されるべき』ということなのでしょうが、それでよいのでしょうか」
官民が集まるある会合で、中堅運送事業者の社長がそう語った。
法律により、半ば強制的に下請構造が2次までに制限されたら、何が起きるのか。下請の立場にある運送会社の経営者たちは、その影響を真剣に考えているだろうか。例えば、これまで4次下請けだった事業者は、法改正後に1次や2次に昇格できるのか。それとも仕事を失うのか。
最近、
「水屋から『直荷主と取引してほしい』と頼まれた」
という話を耳にするようになった。一方で、その誘いを断り、従来通り水屋を通じて仕事を受ける道を選ぶ会社もある。ある下請運送事業者はこう語る。
「水屋からは、スポット運送案件を含め、他にもいろいろな仕事を頂いています。直荷主案件は魅力的ですが、水屋とのつながりが薄れ、結果として水屋経由の仕事が減ってしまうことが怖いです」
飼育された鷲は、野生に戻されても餌を取れず死ぬという。下請運送事業者にも、同じことがいえるのではないか。
構造上の最大の課題は、下請けの立場でなければ仕事を得られない事業者の存在だ。こうした事業者の経営力を高めないまま、形式的に2次下請けまでに制限すれば、倒産が相次ぐ可能性がある。