全米自動車労組がSNSで激怒──「米国労働者が置き去り」 日米協定批判の矛先は日本企業で正しいのか?
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2025年7月、日米は日本車に15%の関税を課す新たな貿易合意に到達した。累計10兆円超の米国投資と1億台超の国内生産を背景に、日本企業は米国製造業の重要な一翼を担う。だが、制度の不整合や地域間格差が労働環境の不安定化を招き、UAWら労働組合の反発は根深い。多様な貿易・税制政策が統一的な産業戦略に欠け、グローバル競争の公正性と雇用の持続性が問われている。
日米貿易協定の衝撃

2025年7月22日、トランプ米大統領は日本との貿易交渉で合意に達し、日本からの輸入品に15%の関税を課すと発表した。日本は米国からの自動車輸入の市場開放や農産物の追加輸入、総額約80兆円にのぼる5500億ドルの投資を約束したことが合意の決め手となった。
米国はすでに日本の自動車や鉄鋼・アルミニウムに個別関税を課している。8月1日からはその他の輸入品に対して25%の関税を予定していた。今回の合意により、日本から米国に輸出される自動車の追加関税は25%から12.5%に引き下げられた。既存の2.5%と合わせて合計15%の関税が課されることになる。
この合意を受けて、ゼネラルモーターズ(GM)やフォード、ステランティスの「デトロイトスリー」の株価は上昇した。しかし、米自動車業界からは反発の声が強い。米自動車貿易政策評議会(AAPC)のマット・ブラント会長は米国の産業と労働者に不利益だと非難した。全米自動車労組(UAW)も強く反発している。UAWは7月23日、ソーシャルメディアXの公式アカウントで声明を発表し、
「トランプ政権が発表した日本との貿易協定に強い怒りを表明する。米国の労働者がまたしても置き去りにされている」
と述べた。犠牲や外国優遇への不信感が広がるなか、日米合意は関税率を軸にした政策変更だ。制度設計や雇用、グローバル競争の公平性など、複雑な論点が絡み合っている。