「宇宙旅行」って、結局いくらするの? 価格破壊で進む個人旅行時代――富裕層が買う体験の資本化とは
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宇宙旅行はかつて国家主導の莫大な投資による特権だったが、近年はスペースXら民間企業の技術革新で費用削減が進む。だが、現実には数十億円規模の高額商品として富裕層に限定され、誰もが気軽に行ける次世代旅行とは程遠い。費用低下の裏に潜む市場の実態と課題を読み解く。
富裕層向け商品化の実態

今進んでいるのは、宇宙旅行の大衆化ではない。資産層向けに設計された高価格商品の形成である。娯楽型のクルーズと比較しても、宇宙旅行が提供しているのは時間の移動ではなく、希少な体験という資本的価値である。
宇宙旅行はインフラとしての移動手段ではない。むしろ、資産を体験に変換する新たな支出形態と見るべきである。
価格の低下は肯定的な材料だ。ただし、それが利用の平等性や移動権の拡大に直結するわけではない。いま問うべきは価格そのものではなく、誰がそのサービスを組み立て、誰のために開いているのかという供給側の姿勢である。