「宇宙旅行」って、結局いくらするの? 価格破壊で進む個人旅行時代――富裕層が買う体験の資本化とは
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宇宙旅行はかつて国家主導の莫大な投資による特権だったが、近年はスペースXら民間企業の技術革新で費用削減が進む。だが、現実には数十億円規模の高額商品として富裕層に限定され、誰もが気軽に行ける次世代旅行とは程遠い。費用低下の裏に潜む市場の実態と課題を読み解く。
宇宙開発費用の推移と新たな商機

米国は1960~1970年代、ソ連との宇宙開発競争に国家の威信をかけ、約10年間で250億ドルを投入した。
2001年には実業家デニス・チトー氏が民間人として初めて、ロシアのソユーズ宇宙船でISSに8日間滞在した。当時、米国では民間人の宇宙旅行が推奨されず、チトー氏は自費で約2000万ドルを支払った。
21世紀に入り、イーロン・マスク率いるスペースXをはじめ、ヴァージン・ギャラクティックやブルーオリジンがロケットの再使用で打ち上げコスト削減を進め、民間主導の宇宙開発が急速に合理化された。
NASAの月探査「アルテミス計画」では、1回の打ち上げ費用が40億ドルに達する見込みだ。前澤友作氏が月にアーティストを送る計画に1000億円を準備したが、スペースXのスターシップ開発遅延で中止となった。
2021年に実施された史上初の民間人のみの宇宙旅行「インスピレーション4」は約2億ドルとされ、大半は実業家ジャレッド・アイザックマン氏が負担した。
ISSに8日間滞在できるアクシオム・スペースのパッケージ料金は5500万ドル(約80億円)にのぼる。