自動車メーカーが「サブブランド」強化に動く根本理由 EV時代に問われる差別化戦略とは?

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近年、自動車メーカーのサブブランド戦略が収益拡大やブランド価値向上の要として台頭している。トヨタ「GR」やスバル「STI」などが多様な顧客層を獲得し、販売の約4割を占めるモデルも登場。EV普及やカーボンニュートラル対応で役割が拡大し、技術検証の場としても重要性を増すサブブランドの実態と戦略を探る。

EV時代に拡大するサブブランド戦略の価値

EV化やカーボンニュートラル化が進む自動車業界でサブブランドはどう残れるのか?(画像:メルセデス・ベンツ)
EV化やカーボンニュートラル化が進む自動車業界でサブブランドはどう残れるのか?(画像:メルセデス・ベンツ)

 ここまで見てきたように、自動車メーカーのサブブランド戦略は、ユーザーニーズの多様化やブランド価値向上、収益強化を目的に広く活用されてきた。電動化の進展により、サブブランドの役割は従来以上に拡大している。

 例えばメルセデス・ベンツは「EQ」ブランドで電気自動車(EV)展開を進めてきたが、近年は全車EV化目標を見直し、今後の戦略は流動的になっている。

 EVはシンプルなパワートレイン構造ゆえに、車両ごとの個性や「走り味」の差別化が難しい課題がある。そのため、デザインや走行感など情緒的価値を訴求するサブブランドの重要性が高まっている。

 BMWやアウディ、ポルシェはEVでも独自の走行感や世界観を前面に出し、顧客層に訴求している。アバルト・500eでは独自のサウンドジェネレーターを搭載し、バッテリーEV化後もブランド独自の個性を演出している。

 また、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みでも、サブブランドは重要な役割を果たす可能性がある。合成燃料(e-fuel)やバイオ燃料など、内燃機関を存続させる新たな選択肢を探る場として、サブブランドの活動が注目されている。

 サブブランド戦略では、トヨタが水素エンジン車でスーパー耐久シリーズに参戦するなど、モータースポーツが新技術の実証やブランド価値向上の場になっている。こうした活動で得た技術や知見は市販車開発にフィードバックされ、サブブランドがその橋渡し役を担うケースが増えている。

 このように、自動車は移動手段からライフスタイルの一部へと変わりつつある。サブブランドが提供する独自の価値や体験は、ユーザーとメーカーの関係を強化する重要な要素といえるだろう。

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