自動車メーカーが「サブブランド」強化に動く根本理由 EV時代に問われる差別化戦略とは?
近年、自動車メーカーのサブブランド戦略が収益拡大やブランド価値向上の要として台頭している。トヨタ「GR」やスバル「STI」などが多様な顧客層を獲得し、販売の約4割を占めるモデルも登場。EV普及やカーボンニュートラル対応で役割が拡大し、技術検証の場としても重要性を増すサブブランドの実態と戦略を探る。
サブブランドで変わる収益構造

自動車メーカーがサブブランド戦略を強化する背景には、ユーザー心理とメーカーの戦略というふたつの側面が密接に絡み合っている。ユーザーは特別感や個性を重視し、サブブランド車に所有満足を求める傾向が強い。
例えば、スバルの人気ステーションワゴン「レヴォーグ」に2016年6月に追加された最上級グレード「STI Sport」は、登場後すぐに人気を博し、販売の約4割を占めるまでになった。これはユーザーが高価格モデルに価値を見出している証拠だ。
専用チューニングされたサスペンションによる上質な乗り心地や、ボルドー色の本革シートなど内外装の特別な仕立てが、
「標準車では物足りない」
と感じるユーザーの心を掴んだのである。
一方、メーカー側の狙いは明確だ。まず収益性の向上が挙げられる。サブブランド車は標準車より車両価格が高く設定されており、一台当たりの利益率が高い。レヴォーグのように高価格帯モデルが販売の主力になれば、メーカー全体の収益構造は大きく改善される。
次にブランドイメージの強化と再構築だ。日産は「NISMO」と「AUTECH」というふたつのブランドでアプローチする。「NISMO」はスポーツ性能重視のユーザーに、「AUTECH」は上質さや個性を求めるユーザーに、それぞれ異なる価値を提供している。これにより「ピュアスポーツ」を求める層と「プレミアムスポーティ」を好む層の双方にアプローチし、ブランドの訴求力を多角的に高めている。
また、モータースポーツ活動で培った技術や情熱を市販車に反映させることは、ブランド全体の技術力をアピールし、ファン育成にも有効な戦略だ。ブランド価値の向上やマーケティング効果は依然として大きい。