熊本は「福岡」を超えられるか? 空港・駅・人口で見る“圧倒的格差”の正体――テクノポリスは“九州のシリコンバレー”になれるか

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関西以西で「独り勝ち」とされる福岡市と、TSMC効果で活気づく熊本市。両市の空港、中心駅、大規模バスターミナルを比較し、その実力差と熊本市の対抗策を探る。

地方空港に託す逆転の布石

熊本空港では、空港アクセス鉄道の空港直下乗り入れが期待される(写真:菅原康晴)
熊本空港では、空港アクセス鉄道の空港直下乗り入れが期待される(写真:菅原康晴)

 福岡vs熊本。単純な実力比較では、現時点で「熊本が福岡を超える日」が来るとは考えにくい。だが、棲み分けの視点を取り入れることで、熊本が福岡に対抗する道は残されているのではないか。

 ひとつの示唆となるのが、米西海岸に位置するサンフランシスコ(人口約80万人)と、シリコンバレーの中心都市サンノゼ(人口約100万人)の関係性だ。両市の距離は約70km。サンフランシスコ空港は世界的な拠点空港として機能しており、一方のサンノゼ空港は規模では劣るものの、シリコンバレーの最寄り空港として一定の存在感を保っている。

 この構図は、福岡と熊本の関係に重なる。熊本には、先端産業集積地であるテクノポリスがある。もちろん、行政区の構造や都市圏の捉え方、交通インフラの整備状況は日米で大きく異なる。米西海岸には新幹線のような高速鉄道網がない。そのため単純な比較はできないが、それでも、シリコンバレーとサンノゼという関係性をヒントとすれば、熊本が空港を起点に福岡に対抗する戦略は十分に描ける。

 カギを握るのが、熊本空港アクセス鉄道の整備方針だ。熊本県は、同路線の空港駅を空港敷地外ではなく、地下でターミナル直下に乗り入れる場合、建設費が約150億円追加になると試算している。最終判断は県に委ねられるが、中長期的視点に立てば、その追加投資が

「熊本 = シリコンバレー化」

の基盤を築き、結果的に県全体としてリターンを回収できる可能性はある。空港直下乗り入れは、単なる利便性の向上にとどまらない。産業戦略の根幹を支える基盤整備であり、いま一度、その価値を再考すべき局面にある。

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