現役タクシー運転手が目撃した「無念の死」 同僚たちが背負う「過重労働」の宿命とは

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タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、過重労働について。

厚労省「過労死白書」を読み解く

街中を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)
街中を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)

 東京都内では約4万7000台のタクシーが、都心から下町、住宅街まで、まさに迷路のような道を日夜走り回っている。ここでは現役タクシー運転手の筆者が見てきた現場でのエピソードを紹介しつつ、タクシー業界が抱える課題を取り上げてみたい。

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 総務省統計局の区分で、タクシー業界は「運輸業」になる。その運輸業はかねて過重労働の深刻さが指摘されてきた。

 厚生労働省の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、過労死などに関する調査研究の重点業種・職種の一つに自動車運転従事者も含まれている。

 同省の「過労死等防止対策白書(2021年版)」によると、2020年度に脳・心臓疾患の労災請求件数の多かった職種1位は自動車運転従事者だ。業種別では道路貨物運送業(トラックドライバー)が飛び抜けて多いが、道路旅客運送業(バス、タクシー運転手)も上位に入っている。

 運送業従事者の労働時間(1週間)が50時間を超える割合は、トラック運転者51.8%、バス運転者39.1%、タクシー運転者51.8%と、いずれも全業種の値(49.7%)を上回る。

 また、タクシー運転者に長時間労働が生じる理由として最も多かったのは「予定外の仕事が突発的に発生するため」(39.3%)。業務に関連したストレスや悩みの内容は「賃金水準の低さ」(47.6%)、「売上・業績等」(45.7%)、「事故等の恐れ」(45.2%)の順に多かった。

 とりわけ「売上・業績等」の45.7%は、10%台以下にとどまるトラック・バス運転者や全業種の数値を大幅に上回っている。出来高を確保するために無理をするドライバーたちの実情が垣間見える。

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