新型車が出ると、「やっぱり前のほうが良かった」と必ず言われる理由

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量産車のデザインは安全性やEV化対応でクリーン化が進む一方、ユーザーの感性とのズレが顕在化。先代モデルへの愛着と、新型の無個性化の狭間で失われる「物語性」の重要性を探る。

ブランド記憶と形状維持の重要性

 現代の車は空力性能も安全性も燃費も優れている。見た目も整い、上質に仕上がっている。しかし、それでも欲しいと思わせる力が足りないとすれば、物語の断絶が原因かもしれない。

「先代の方がかっこよかった」という声は、美的嗜好や郷愁ではない。かつての車との関係性が継承されていないことへの違和感である。クリーンなデザイン自体が悪いわけではない。ただ、その造形に「なぜこの形なのか」という意味や、ブランドの記憶が宿っていなければ、いくら整っていても心は動かされない。

 BMWやアウディが象徴的なシルエットを守り続けてきた背景には、合理性と情緒性の両立を目指す姿勢がある。視覚的連続性は信頼や愛着を育む要素であり、それが「これでいい」ではなく「これがいい」と思わせる車を生んできた。

 洗練は否定されるべきものではない。しかし、整いすぎた先には意味を織り込む工夫が求められるのではないだろうか。

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