新型車が出ると、「やっぱり前のほうが良かった」と必ず言われる理由

キーワード :
量産車のデザインは安全性やEV化対応でクリーン化が進む一方、ユーザーの感性とのズレが顕在化。先代モデルへの愛着と、新型の無個性化の狭間で失われる「物語性」の重要性を探る。

合理化に遅れる感性の壁

 人間は一般的に、見慣れたものを美しいと感じる傾向がある。これは認知心理学で「単純接触効果(mere exposure effect)」として知られている。つまり、車の場合も、長く街中で見てきた先代モデルのフォルムが、いつの間にか美の基準として定着しているわけだ。

 そこに突然、先代の趣を捨てたクリーンでプレーンな新型が現れると、前のほうがよかったという感情が生まれる。これは単なる好みの問題ではない。ユーザーが無意識に築いていた記憶とのつながりが断ち切られることによる違和感である。

 とくに個性的なモデルであった場合、その違和感は大きくなる。先述したシエンタしかり、ホンダ「ヴェゼル」もその一例だ。

 コンパクトSUVである先代ヴェゼルは、シャープなキャラクターラインとダイナミックな面構成が特徴の、スポーティーでアクティブなデザインだった。だが現行型では方向性が大きく変わり、都会的でクリーン、そしてエレガントなスタイルへと置き換えられた。その結果、違和感を覚えたユーザーも少なくなかった。

 こうした例が示すように、たとえデザインが時代性を踏まえた進化であっても、それが上位互換として素直に受け入れられるとは限らない。感性の変化は、合理性の変化よりも遅れて訪れるからだ。

全てのコメントを見る