新型車が出ると、「やっぱり前のほうが良かった」と必ず言われる理由
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量産車のデザインは安全性やEV化対応でクリーン化が進む一方、ユーザーの感性とのズレが顕在化。先代モデルへの愛着と、新型の無個性化の狭間で失われる「物語性」の重要性を探る。
EV化が奪う造形の個性
いま、量販車のデザインではクリーンであることが、機能性や合理性だけでなく、先進性の記号としても作用している。かつて車のデザインは、動きのある造形やエッジの効いた形状、ブランドごとの個性を反映するものだった。しかし現在では、EV化とグローバル戦略の進展により、整って滑らかなデザインが主流になりつつある。
とくにEVでは、エンジン冷却の必要性が低いため、フロントフェイスの開口部が小さくなる。その結果、シンプルで無表情に見える造形が増えている。だがこれは単なる構造上の制約ではない。環境意識や新しい価値観を視覚的に伝えるデザイン的手法でもある。トヨタ「bZ4X」やメルセデスの「EQシリーズ」は、その代表例といえる。
こうしたプレーンでノイズの少ない外観は、文化的背景が異なる市場でも、先進的であることを共通語として伝える。そのため、記号性や遊びの要素は削ぎ落とされ、デザインは整然とした方向へと収束していく傾向がある。
一方で、ユーザーが求めるかっこよさや存在感といった情緒的価値は、合理性と必ずしも両立しない。例えば現行型トヨタ「シエンタ」は、欧州車のような洗練されたスタイルを持つが、以前のような強烈なキャラクター性は薄れたという声も目立つ。