率直に問う 電動キックボードは「原付扱い」に戻すべき?――違反2.5万件が暴く都市の秩序崩壊危機

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2023年の道路交通法改正で電動キックボードの免許不要化が進む一方、交通違反は1年で2万件超に達した。利便性拡大の影で公共秩序の維持は危機に瀕し、制度設計の根本的欠陥が露呈している現状を分析する。

急拡大サービスの盲点

 2020年代に入り、都市部を中心にマイクロモビリティの導入が進むなか、電動キックボードはシェアリングサービスによって急速に普及した。だが、当初は原動機付自転車に分類され、

・免許の取得
・ヘルメットの着用
・車道の走行

が義務付けられていたことから、市民の利用には一定のハードルが存在した。

 業界団体や関連企業はこの障壁を撤廃すべく働きかけを強め、政府は2023年の法改正により

「特定小型原動機付自転車」

として免許不要での運転を認めた。年齢要件は16歳以上、最高速度20km/h、ヘルメットの着用は努力義務とされた。利便性が前面に出され、アクセスの間口を広げることに成功したように見えた。しかし、この設計は前提を欠いていた。すなわち、

「交通ルールとは何か」
「標識や信号の意味とは何か」

といった基礎的知識を身につけていない者が、公共空間において移動の主体となるという現実である。

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