新車から「スペアタイヤ」が消えた! いったいなぜ? 道路事情「改善」の功罪を問う

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スペアタイヤは今や絶滅危惧種――2020年代以降、代替手段としてパンク修理キットを搭載。燃費性能や車内スペース、製造コストの合理化が背景にある。一方で、高速道路では今もパンクが多発。安全性とのバランスをどう取るか、ドライバーの選択が問われている。

キットの限界と今後の展望

タイヤのパンク修理(画像:写真AC)
タイヤのパンク修理(画像:写真AC)

 パンク修理キットは軽量で省スペースという利点があり、多くの新車に搭載されている。ただし、あくまで応急処置用であり、恒久的な解決策ではない。

 修理後の走行距離は一般的に50~100km以内に制限され、走行速度も80km/h以下とされている。さらに、修理剤を使ったタイヤは再利用できない場合が多く、ホイールの洗浄やタイヤ交換が必要になることもある。修理剤には2~4年の使用期限があり、定期的な確認が欠かせない。

 JAFのユーザーテストでは、初めてでも説明書を見ながら作業は可能という結果が出ている。ただし、実際の路上や外出先での作業には不安を感じるユーザーが多い。特に交通量の多い道路や悪天候下では、作業が危険をともなう。そのため、事前に説明書に目を通し、使い方を把握しておく必要がある。

 燃費性能やスペース効率の観点から、自動車メーカーはスペアタイヤの非搭載化を進めてきた。一方で、修理キットでは対応できない損傷や、万が一に備えたいというニーズも根強い。このため、多くの車種ではスペアタイヤがオプション設定として残されている。

 結局のところ、スペアタイヤを搭載するかどうかはドライバーの価値観とカーライフに左右される。

・燃費や荷室の広さを優先するなら:修理キット
・安心感や非常時対応を重視するなら:スペアタイヤ

という選択になる。メーカー側もオプションとして選択肢を提供する姿勢を見せている。

 今後、タイヤや自動運転技術の進化によってパンクリスクはさらに減少する可能性がある。ただし現時点では、修理キットとスペアタイヤそれぞれの特性と限界を理解し、自身の使い方や環境に応じた選択が求められる。

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