新車から「スペアタイヤ」が消えた! いったいなぜ? 道路事情「改善」の功罪を問う

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スペアタイヤは今や絶滅危惧種――2020年代以降、代替手段としてパンク修理キットを搭載。燃費性能や車内スペース、製造コストの合理化が背景にある。一方で、高速道路では今もパンクが多発。安全性とのバランスをどう取るか、ドライバーの選択が問われている。

道路環境とタイヤ技術の進化

ランフラットタイヤの仕組み(画像:横浜ゴム)
ランフラットタイヤの仕組み(画像:横浜ゴム)

 スペアタイヤが不要とされる背景には、日本の

・道路環境の著しい改善
・タイヤ技術の進歩

が大きく影響している。国土交通省が2023年に発表した「道路整備白書」によれば、日本の道路舗装率は90%以上に達している。道路インフラの整備によってパンクリスクは大幅に減少した。悪路によるタイヤのダメージや路上の異物によるパンクは、過去に比べて大幅に減っているのだ。

 さらに、タイヤ自体の技術も大きく進化している。素材や構造の改良により、現代のタイヤは耐久性と耐パンク性能が向上している。ランフラットタイヤの普及も進んでいる。ランフラットタイヤは空気圧がゼロになっても一定距離を走行できるため、パンク時のリスクを大幅に低減する。特に欧州車を中心に標準装備が広がり、スペアタイヤ非搭載の車両設計が一般化しつつある。

 こうした背景から、パンクは滅多に起こらないという認識が広がっている。しかし、日本自動車連盟(JAF)の2023年度ロードサービス出動理由データでは、「タイヤのパンク・バースト・エア圧不足」を含むタイヤトラブルが全体の約20.2%で2番目に多い。高速道路に限れば約過半数を占めており、リスクが完全にゼロになったわけではない。

 一方で、パンクの発生頻度は長期的に減少傾向にある。以前ほどスペアタイヤは必須という考えは薄れているのが現状である。

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