「魔が差した」 1000円の着服で退職金1200万円没収! 京都市バス運転手への厳罰主義は正当か? 人材不足の現場にさらなる懸念も

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京都市営バスのベテランドライバーが千円着服で懲戒免職、1200万円の退職金も全額不支給に。最高裁は市の裁量を支持したが、過重な処分は人材流出と制度の硬直化を招き、公共交通の持続性に影を落としている。

現場力を奪う画一的処分制度

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 この問題は、処分の重さだけにとどまらない。制度の構成原理が、公共部門の労働環境と人材確保にどう影響するかが問われている。

 ドライバーという職種は、代替性が低い。継続的な経験の蓄積が欠かせない仕事だ。にもかかわらず、担い手が一度の失敗で全人生を否定される制度になっている。こうした仕組みは、人材の供給に直接的な悪影響をもたらす。信用回復を名目に設計された処分体系が、逆に人材流出を加速させているなら、それは制度の機能不全だ。経済的にも損失が大きい。

 再発防止はもちろん重要だ。ただ、そこで働く人が

・継続的に力を発揮できること
・過ちを犯しても回復可能であること

が前提になければ、公共交通の運営そのものが脆くなる。短期的な秩序維持を優先するあまり、長期的な人材循環や現場知の継承が阻まれているとすれば、制度は整合性を欠いている。すべての過ちを同じように扱う仕組みでは、行動の背景や職場の実情が無視される。その結果、実務レベルでの問題解決能力も失われてしまう。

 必要なのは、違反の事実を否定することではない。処分の運用に幅を持たせ、事案ごとの特性を冷静に分析できる仕組みが求められている。例えば、懲戒処分に累積評価の考え方を導入することが考えられる。過去の職務実績や勤務態度、改善の意思などを加味し、多段的に対応する制度が有効だ。また、処分の適正性を判断する場には、利害から一定の距離を置く第三者評価の仕組みを組み込むべきだろう。これは雇用側のリスクを抑えるだけでなく、公共サービス全体の品質維持にもつながる。

 いまの制度は、社会的信頼の回復を重視するあまり、人的資本の再活用という可能性を自ら閉ざしている。こうした非効率は、行政の信頼性向上という本来の目的にも逆行している。公的資源を運用する以上、罰則と回復のバランスが重要になる。その判断基準は理念ではなく、現場を持続可能にする具体的な制度設計に置かれるべきだ。

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