バスは消え、タクシーは来ない…全国2割「移動難民」化の悲劇! なぜ「足」は奪われたのか? 【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(28)

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日本全国で進行する交通空白問題。マイカーと公共交通の移動格差が広がる中、2024年4月からタクシーを含む新基準が導入された。地域の実情に応じた対応が求められる中、今後の交通サービスの改善には何が必要か、注目が集まる。

公共交通の衰退と危機感

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 皆さんがお住まいの地域の交通は、この10年、20年でどう変化してきているだろうか。道路整備が進み、買い物や病院へのマイカーでのお出かけは着実に便利になり、移動時間も昔よりも短くなったのではないだろうか。

 一方で、路線バスや鉄軌道は、この20年間で大きな変化はなく、昭和の原風景がそのまま残っている地域も多い。パンデミックが明けてからは、減便や終バスの繰り上げが加速し、最寄り駅にいつもいたタクシーも今は消え、気づけば昔よりもかなり余裕を持って出かける準備をしないと安心してお出かけできない状況になっている。そして、日本全国でマイカーとの移動時間差、マイカーとの移動格差がさらに広がってはいないだろうか。

 これは決して過疎地だけの話ではなく、また地方都市だけの話でもない。大都市近郊でも同様のことが起きており、世界屈指の人口が集積している東京でも生じていることは、国家の危機といえる。マイカーと公共交通の移動時間の差が拡大した結果、この30年間でバスやタクシーの利用者は半減した。わが国で、マイカーは便利、公共交通は不便という価値観が定着したことが、バス離れ、公共交通離れの根本の原因だろう。

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